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運動指導をしていない幼稚園(保育園・こども園)のほうが運動能力が高い?~幼児に体操教室は必要?~

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今回は、「運動指導の有無によって子どもの運動能力に差が出るのか」ということについて話をしていきたいと思います。

幼稚園や保育園、こども園に子どもを預けることとなった場合、やはり、預け先の園がどのような取り組みをしているのか、どのような方針のもとに保育、教育を行っているのか気になりますよね。中でも、近年人気のある園として体育教室などの「運動指導」を行っている園が挙げられます。様々なスポーツや運動に触れることを日常の園生活に取り込み、運動能力が高められることをアピールポイントとしています。

確かに、毎日運動に触れられる環境の中にいれば、おのずと運動能力は高くなりそうです。

しかし、残念なことに「運動指導」を行っているからと言って、必ずしも運動能力が高くなるとは言えないのです。その根拠と、「運動指導」よりも運動能力や心の成長に大事なことについてこれからお話します。

東京学芸大学名誉教授であり、現在は一般社団法人 田中教育研究所 所長でもある杉原隆先生の研究によると、「運動指導」について以下のことが明らかとなっています。

①運動指導をしていない園のほうが、運動能力が高い

幼稚園での運動指導頻度による運動能力の比較をしたところ、運動指導を全く行っていない園のほうが、運動指導を行っている園よりも運動能力が高いことが明らかとなっています。

具体的には、週に運動指導が0回の園と、1~6回、7回以上の園を比べたところ、運動能力得点(25m走(または往復走)、立ち幅跳び、ボール投げ、両足連続跳び越し、体支持持続時間、捕球の6種目の総得点)が一番高かったのは運動指導を行っていない園でした。ちなみに、2位は1~6回行っている園で、最下位は7回以上行っている園でした。

根拠資料:杉原隆ほか「幼児の運動能力と運動指導ならびに性格との関係」体育の化学60(5)、2010

②「遊び」を意識させた保育のほうが運動能力が高い

次に、運動指導ではなく「遊び」を意識させた活動について比較したところ、遊び志向得点(子どもに自分で遊びを決めさせているか、指導者が遊びを決めているか、などの質問から得点化した指標)が高い園のほうが運動能力が高いということが明らかとなっています。

遊び志向得点が低い群、中くらいの群、高い群に分けて比較したところ、遊び志向得点の高い園が一番運動能力が高くなっていました。

根拠資料:杉原隆ほか「幼児の運動能力と運動指導ならびに性格との関係」体育の化学60(5)、2010


これらのことから、運動指導が必ずしも運動能力を高めるということではないということが分かったかと思います。

ここで誤解してもらいたくないのが、「指導をしないほうがよい」というわけではないということです。遊びを決定するのは子ども達自身ですが、新たな遊びを提案したり、遊びに誘ったり、できない技能を補助してあげたりということは適宜必要となります。あくまで、保育者や指導者、大人が主導となって子どもの遊びややることを決めてしまうのがまずいということです。

いろんな遊びを一緒に考え、一緒に遊び、子どもの遊びを活性化させてあげることは、大人の大事な役割です。

では、なぜ運動指導を行っている園のほうが運動能力が低くなってしまったのでしょうか。

この疑問について、杉原先生は以下の回答をしています。

①好きでもない運動をさせられることが多いから

運動指導を頻繁に取り入れている園では、運動のプログラムを指導者や保育者が決めます。そのため、子ども達が本来遊びたい内容ではなかったとしても、その運動をしなければならないのです。こうなると、運動したいという意欲が育たたず、決められた種目が苦手な種目であった場合、運動嫌いが加速してしまうと杉原先生は指摘しています。

②説明や待ち時間が長い

運動指導を行う際は、どうしても個別に技能指導をすることが多くなるため、自分の順番がくるまでは待ち時間となってしまったり、そもそも、これから行う運動の説明があったりと、運動する時間が削られてしまう場面が多くなってしまいます。そうすると、自由に運動をする場合と比較しても、必然的に活動量が少なくなってしまうのです。

③同じ動きを繰り返すことが、運動能力の向上に貢献していない

運動指導では、同じ動きを繰り返し練習し、一つの技能をマスターしたうえでさらなる技能に挑戦する、といった場面が見られます。ただ、幼児期は様々な運動パターンに触れ、その経験した運動パターンを組み合わせながら、新たな運動を習得する(=運動コントロール能力を高める)ということが重要となるため、一つの動きを重点的に練習する運動指導では、技能のレベルは向上したとしても、運動能力そのものの向上にはつながらないのです。

ここまで読んでいただいている方々は、おそらく「子どもの運動能力を高めたい」という考えをお持ちの方がほとんどかと思うのですが、「運動能力を高めることが生きていくうえで必要なのか」というお考えをお持ちの方もいらっしゃるかと思いますので、運動能力を高めることで心の成長にもつながるということをお話しいたします。

◎運動能力が高いと、「非認知能力」も高まる

非認知能力というのはコミュニケーション力や忍耐力、協調性、情緒安定性など、一般的に数値化することが難しいとされる能力のことです(テストの成績や通知表、IQや偏差値などは数値化できるため認知能力と呼ばれます)。

先ほど紹介した杉原先生の研究によると、運動能力が高い子のほうが、自信があり、忍耐力が高く、友達関係が良好であることが明らかとなっています。(この研究は子ども自身の運動能力と、担任をしている保育者がそれぞれの子どもの非認知能力について5段階で評価したものを比較した結果です。)

根拠資料:杉原隆ほか「幼児の運動能力と運動指導ならびに性格との関係」体育の化学60(5)、2010

以上、運動指導の必要性と運動の重要性についてお話をしました。これから子どもを預ける園探しをしている方々にとって、少しでも園選びの参考にしてもらえたらと思います。

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