「小さな研究も積み重ねたら大きな研究へとつながる」という幻想

大学教員の仕事

今回は研究に関する考えについて書いてみたいと思います。

大きな研究は大きな研究へとつながり、小さな研究は小さな研究にしかつながらない

表現が下手で大変申し訳ありませんが、研究の世界というのは、想像以上に残酷な世界だと感じています。

大きな研究ができる人はさらに大きな研究へと進みますが、小さな研究をいくら積み重ねたところで、大きな研究へとつながることはほとんどありません。

稀に小さな研究が大きな研究へとつながることがあるかもしれませんが、確率的に宝くじのようなものでしょう。

お金の世界とも似ていると感じます。

使い方次第ですが、大きなお金を持っている人は複利などでさらなるお金を生み出し、お金に困っている人は、その時々の問題を解消することで手一杯で、新たなお金を生み出す余裕などありません。

先ほどお話しした、宝くじに当たりでもすれば、世界が一変しますが、人類の中でその幸運に選ばれる人が何人いるのでしょう。

大変低い確率だと言えます。

大きな研究をしたければ、大きな研究をするしかない

研究者の方はお分かりかと思いますが、大きな研究を行うことができれば、その業績を基に外部資金等を獲得できる確率が上がり、さらなる大きな研究につながる可能性も高まります。

そして、大きな研究をするために必要なのは、十中八九、お金(研究費)か研究環境です。

潤沢な研究費があれば、大きな研究を行いやすくなり、整った研究環境があれば、こちらも大きな研究を行いやすくなります。

極端な例にはなりますが、スポーツ関連の研究で考えてみると、エアロバイクやトレッドミル、超音波エコーなどが揃っている大学と、グラウンドと体育館しかない大学とでは、行える研究の幅が全く違ってきます。

前者は詳細な生理学的研究から心拍数を指標とした心理的な研究まで幅広く行うことができますが、後者は知恵を絞ったとしても、アナログに頼ることが多くなるため、詳細な研究は難しくなります。

研究費が潤沢に支給される大学に着任することができれば、アイデア次第ですが、大きな研究を行えるとともに、大きな研究を行う環境を整えやすくもなります。

また、環境が整っている大学に着任することができれば、必要なものは自分でそろえる必要があるものの、設備がなければ行うことのできない研究をお行うことができます。

そして、行った研究をさらに大きくしていくことも可能です。

では、上記のような環境や研究費がない場合、その研究者は小さな研究を粛々と続けるしかないのでしょうか。

否、そうではありません。

現状を打破して、大きな研究に取り組むための方法として、私は二つの方法があると思っています。

①外部資金を獲得する

科研費を中心とした外部資金を獲得し、研究費をとってくるというのが一つ目の方法です。

当たり前のことを言っていますが、これが王道と言えるでしょう。

ただ、正直なところ、この外部資金を獲得するためにも業績が必要となりますので、スタートアップや挑戦的萌芽などの業績が比較的少なくても良い分野で獲得を目指す以外、ある程度インパクトのある研究を行っておく必要があります。

1度外部資金を獲得することができれば、それ自体が業績となりますので、大きな研究を行うための最初の一歩は打破できたといえるかもしれません。

②質の高い環境、設備を整える

業績に関わらず大きな研究を行うために、身銭を切り、質の高い環境を作り上げるというのが二つ目の方法です。

上記でも話をしましたが、大きな研究を行うためには大きな研究を行う必要があります。

では、その最初の研究をどうすればよいのかというと、身銭を切るしかありません。

研究者は社会のイメージと違い薄給であることが多いため、ある程度の貯蓄をする必要があるでしょう。

ただ、その大切な資金を使うときには、最高級の道具を揃えることが重要です。

実験の試薬が必要なのであれば、最も精度の良い試薬を揃え、分析にソフトウェア必要なのであれば、最も処理速度の速いソフトウェアを買うなど、研究に必要な道具、設備の中で最も効果を発揮するものを買いそろえることで、単発であったとしても大きな研究を行うことが可能となります。

使い捨ての道具などもあり、1度しか研究を行うことができなかったとしても、その1回の業績が大きな成果につながるかもしれません。

もちろん、研究ですので思うような結果が出ないこともありますが、そこは割り切って、次の研究のために再度資金を貯めるしかありません。

サイクル

今回は研究に関する所感を書いてみました。

全ての研究が私の所感に当てはまるとは思ってはおらず、分野によっては潤沢な研究資金やより良い研究環境が必要ない可能性もあります。

ただ、設備によって研究内容の可否が決まることは往々にしてあり、そのような分野で闘うためには、アイデアだけではどうにもならないこともあるのです。

かつて、iPS細胞を発見された山中伸弥先生も、自らマラソン大会にエントリーし、寄付を集めていました。

研究費やより良い環境はあるに越したことはないと思うのです。

大きな研究を行える循環に入るためには、最初の一歩が重要となりますが、その一歩を踏み出せるかどうかで、研究者人生は変わってくるのかもしれません。

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