大学教員を目指すうえで、無視できない情報の一つに「財務状況」があります。
これは、その名の通り、大学が使ったお金、得たお金、持っているお金などが記載されている情報であり、基本的に公開されています。そのため、誰でもその大学の財務状況を知ることができます。
そして、この財務状況をしっかりと把握することで、大学が健全な運営を行うことができているか知ることができるのです。
そして、かなり雑ではありますが、給与体系も予測することができます。時々、この話をすると「大学教員を目指しているのはお金のためじゃない」という方がいらっしゃいますが、正直、信頼できません。
純粋に研究だけがしたいのであれば、自分が今ついている職業の傍ら研究活動に取り組めばよい話で、給与は高いに越したことはないはずです。
それに、財務状況を知ることは、給与体系を予測するだけではなく、大学がもつ体力を知ることにもつながります。
具体的にどういうことなのか、見ていきましょう。
大学の財務状況
冒頭でもお話ししましたが、大学の財務状況については、全国すべての大学で情報が公開されています。これは法律で公開が義務とされているからであり、載っていない大学は法律違反となります。
そのため、ホームページの「情報公開」という欄に必ずあるはずです。
自分が公募にチャレンジしようとする場合は、その大学の財務状況をチェックすることをおすすめします。
チェックする項目については、細かく見れば見るほど項目数も多くなっていきますが、私はざっくりとしか見ませんので、いつも見る項目は「貸借対照表」の1点だけです。
貸借対照表
この貸借対照表には、年度ごとに「資産の部」「負債の部」「純資産の部」「負債及び純資産の部合計」といった項目が設けられています。
「資産の部」というのは、その名の通り、大学が持っている資産の額になります。
固定資産や流動資産など、すべてを含んだものとなりますので、その大学のもつすべての貯金のようなものでしょうか。
(あくまで個人的な解釈であり、正しい解釈ではありません。)
「負債の部」というのは、簡単に言えば借金みたいなものです。
借入金や未払金などが含まれますので、出ていくお金と考えてよいかと思います。
「純資産の部」というのは、大学運営において非常に重要な項目となります。
この欄には「第1号基本金」~「第4号基本金」という項目がありますが後ほど詳しく説明をしたいと思います。
そして、「負債及び純資産の部合計」という欄が一番下に記載されているはずです。
この欄は、貯金と借金を相殺させた場合、この大学にはこのくらいの資産が残っていますよ、ということを示す項目であり、純粋な大学の財力といってもよいでしょう。
そのため、大学の財力を測るときには、たいていこの「負債及び純資産の部合計」の額で比較されることが多いです。
タイトルにも上げましたが、この財力を比較することにより、給与が高そう、低そうといった雑な予測を立てることができます。
私立大学に限られますが、だいたい350億を超えてくると、全国の私立大学の中で200位(約600校中の)には入るかと思いますので、今後、定年くらいまでは安心して働くことができるのではないかと思います。
純資産
さて、上記でもお話しした「純資産」について細かく説明していきましょう。
先ほどの「負債及び純資産の部合計」で大方の財力を測ったあとは、この純資産の部にも目を向けて、大学の財務状況を見てみましょう。
第1号基本金
第1号基本金とは、校舎や校地などの大学というかたちを成すために必要なもので、基本的に「大学設置基準」で最低限の土地や校舎の大きさが決まっています。
そのため、土地や施設、設備が大きい大学程、この第1号基本金が大きくなります。
ただ、大学の土地や施設の大きさなどは、見ればわかることですので、私は1号基本金はあまり注視していません。
第2号基本金
この第2号基本金は今後の大学の発展を予測する上で非常に重要な項目となります。
そのため、私も毎回チェックしています。
第2号基本金とは、大学が将来の発展のために積み立てておくお金を示しており、大学の規模拡大には欠かせないお金です。
そのため、この2号基本金は多ければ多いほど、未来の発展のために使えるお金を積み立てているということになります。
第3号基本金
第3号基本金は、奨学金を中心とした教育や研究に還元するためのお金です。
そのため、この3号基本金が多ければ多いほど、奨学金の援助をしたり、留学生の招致をしたり、研究費を配分したりということが豊富にできることとなります。
つまり、この3号基本金も大学の余裕を測る指標であり、この3号基本金がある大学は、財務状況的にも安定していると言えるでしょう。
第4号基本金
第4号基本金は、いわゆる「維持費」となりますので、この項目はあまり注視しなくてもよいでしょう。
毎年金額が変化するものでもありませんので、比較したところで財務状況を判断する材料にはなりません。
以上、4つの基本金についてぜひチェックしてみましょう。
冒頭でもお話ししましたが、自分が着任するかもしれない大学の財務状況をチェックすることは非常に重要なことです。
自分の給与を予測するためだけではなく、今後、その大学で働いていけるのかどうかを見るための指標となります。
「大学教員」という肩書だけに踊らされて着任した結果、ボーナスが支払われなかった、どんどん給与がカットされていった、という状況も十分にあり得るのです。
大学教員を目指されている方は、公募に挑戦する前に、ぜひその大学の財務状況にも目を向けてみましょう。
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