大学教員の仕事「実習巡回」

大学教員の仕事

今回は「実習巡回」についてお話をしようと思います。

実習巡回とは

あまり聞き慣れない言葉かもしれませんので、説明します。

この実習巡回というのは、すべての大学の学部、学科で行われる仕事ではありません。

この巡回業務は、基本的に保育士資格を取得するために現場での「実習」が必要とされる学部、学科で発生する仕事です。

いわゆる、保育士資格を取得できる「保育者養成校」とされる大学においては、全国保育士養成協議会(2017)が策定した「保育実習指導のミニマムスタンダード」の中に「「実習期間中に実習施設を訪問し、実習施設の指導担当職員と連携しながら訪問指導によって学生を指導すること」という内容が含まれており、これは、厚生労働省の局長通知というものを基に策定されていることから、法令ではないのですが、ほぼ義務といっていいでしょう。

また、教員免許を取得する際の「教育実習」においても、巡回指導を行う場合があります。ただ、教育実習における巡回指導は保育実習程厳密に言及されているわけではないため、行われないこともあります。

その他にも「実習」が必要とされる学部、学科においては巡回業務が発生する可能性がありますが、小学校教員から大学教員を目指される方は、基本的に教育学部、または保育者養成校に着任される方が多いのではないかと思いますので、今回は教育学部、保育者養成校に絞ってお話をしたいと思います。

実習巡回の業務内容

実習巡回の内容としては、その名の通り、学生が実習を行っている実習先へと訪問し、学生に指導を行います。

訪問するタイミングとしては、だいたい実習の中間日あたりとなりますが、訪問数が多い場合はその限りではありません。

ただ、訪問が遅すぎると指導後の改善に要する時間が無くなり、指導が早すぎると、実習先が学生を把握する時間が少なくなりますので、10日の実習であれば実習3日目以降、7日目以前に訪問することが望ましいです。

大学や人によっては指導の進め方が異なりますが、だいたい以下のような流れで指導が行われます。

訪問前

訪問前に実習先へと連絡を取り、巡回指導の日程を決めます。

いきなり指導に行く学校もありますが、基本的に良い顔をされませんので、アポイントを取っていくのが一般的でしょう。

①施設長または実習担当者から学生の様子を聞く

学生の様子について忌憚のない意見をお聞きします。利用者や子どもとの関わりについて、遅刻、欠席などの行動面について、職員とのコミュニケーションの取り方について、など、様々な様子をお聞きします。

そして、その中で課題点、改善点などをピックアップしていき、学生へと伝える内容を絞っていきます。

②学生から話を聞く

担当者との話が終わったら、学生本人とも話をさせてもらいます。

その際、体調面、利用者や子どもとの関わり、実習の内容、配属クラス、気になっていることや困っていること、などを聞き、現状を把握します。その後、担当者から聞いた話を適宜伝え、課題点などがあれば、課題を共有しつつ、その解決策について一緒に考えます。

もし、学生のほうからも職員に対して気になる点、困っている点などがあれば、この時に聞き出しておきます。

③再度担当者と話をする

学生との面談が終わった後は、再度担当者と話をします。


そして、学生の様子や、気になっていること、困っていることなどを共有し、今後の実習指導のお願いをします。

気になっていることや困っていることに関しては、職員とのコミュニケーションに関する問題なども含まれている場合があります。

その時は、教員側でお話しする情報を取捨選択して、お伝えします。

ここは教員の裁量となりますので、難しいところです。

以上の流れが終わったら、巡回指導は終わりとなります。

単純な指導かもしれませんが、この巡回指導を教員一人当たり、多い大学では10~12か所請け負うため、2日~3日かかることは珍しくありません。

しかも、保育者養成校では、保育士資格と教員免許を発行している学校が多いため、保育実習Ⅰ(保育園と施設)、保育実習ⅡまたはⅢ、教育実習と年間では50近くの場所を訪問することとなります。

この担当数は学生の人数と教員の数で決まるのですが、短大や専門学校は人手が足りていないことが多く、1人当たりの担当施設が多くなりやすい傾向があります。

そして、この巡回指導が長期休業中に行われるのであればまだ良いのですが、他の授業も実施している6月や12月などに行われることもあり、その場合は、授業を休講として、巡回業務に当たることもあります。

先日記事にした「高校訪問」と併せると、1年間で60近い場所を訪問することとなるため、この巡回指導は結構な重みがあります。

巡回指導終了後

実習巡回が終わると、巡回指導の報告書を作成する必要があります。学生の様子や担当者からの話を記録しておき、巡回を行った証明とするとともに、今後の指導にも役立てるという名目で存在しています。ただ、実際は巡回指導を行ったという証明の意味合いが強いかもしれません。

この巡回指導に係った経費は、基本的に大学から出張費として支給してもらえます。そのため、電車や車など、交通機関は自由であることが多いのですが、中には自家用車での訪問を禁止している大学もあります。

今回は「実習訪問」についてお話ししました。実習訪問をしていると、教員の顔見て涙する学生や、気丈にふるまう学生など様々ですが、皆それぞれの実習先で頑張っているなという印象です。


教員にとっても大変な業務ではありますが、一番大変なのは学生ですので、巡回業務を行う際には、最大限の激励をしてあげたいものです。

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