今回は新聞遊びの具体例とねらいについてお話ししたいと思います。
新聞遊びは幅広い年齢で楽しまれており、比較的遊びに利用しやすい素材だといえます。しかし、近年は新聞を頼む家庭が減ってきており、各家庭に新聞が当たり前のようにあるという状況が変わりつつあります。そのため、新聞紙を使った遊びを行う際には、保育者があらかじめ新聞紙を準備しておくことをおすすめします。
それでは、まず、ねらいについて考えていきます。
新聞遊びのねらい
①新聞紙を折ったり、くしゃくしゃにしたり、破ったりする楽しさを感じることができる。
このねらいはシンプルに「新聞紙の形を変える楽しさを味わうことができる」などでもよいと思います。
新聞紙はコピー用紙や折り紙などよりも柔らかく、子ども達が形を変える楽しさを味わうことに適した素材と言えます。そのため、丁寧に折ってみたり、くしゃくしゃにしたり、びりびり破ったりと、自由に形を変えて楽しむことは、一つのねらいとして設定することができます。
②新聞紙を使って遊び方を工夫することができる。
①も含まれる大きなねらいとなります。
少し抽象的ですので、具体的な遊び方を紹介しておきます。
新聞紙の形を変える前後どちらでもかまいませんが、新聞紙を投げたり、蹴ったり、上に載ったり、落としたりと、新聞紙を使うことで遊びの幅を広げることができます。
ボールが使えない室内でも、新聞紙で作ったボールなら投げたり蹴ったりしても周りの環境を壊す可能性も低くなったり、新聞紙を高いところからふわふわと落とすだけでも楽しむことができたりと、新聞紙を活用する方法はたくさんあります。
子ども達が自分の好きなように新聞紙を使い、遊ぶことができていれば、十分ねらいは達成できたといえるでしょう。
③新聞紙を体に張り付けながら移動することができる。
年齢によっては少し高度なねらいとなります。
新聞紙を風圧だけで体に張り付けながら歩いたり、走ったりするというねらいです。このねらいを達成するためには、少なからず移動をしなければならないため、立ち歩きができる年齢以上の子どもが対象となります。そして、体に新聞紙を張り付けたまま移動するためには、ある程度のスピードも要求されるため、このねらいを達成することができれば、「歩く」もしくは「走る」といった動作がほぼ思い通りにできていると判断できます。
最初は新聞紙をつかみながら行い、慣れてきたら新聞紙をつかまずに風圧だけでできるようになるとよいですね。
④新聞紙の写真や文字に興味をもち、文字をさがしたり、写真を眺めたりすることができる。
このねらいも、年齢がある程度高い幼児向けのねらいになります。
文字に関しては「文字が読める」ということが興味を左右する大きな要因になりますが、新聞紙に何か書いてある、絵や写真も載っている、ということが気になり、興味をもつだけでも知的好奇心を刺激するきっかけにはなるかと思います。
文字が読める段階であれば、文字探しをして遊ぶこともできます。
興味をもって、「新聞を見る」という姿が見られれば、このねらいは達成したといえるでしょう。
⑤新聞紙を利用してコミュニケーションをとることができる。
新聞紙の上に複数人で載ったり、新聞紙を一緒に破ったりと、新聞紙はコミュニケーションツールとしても活用することができます。2人でのコミュニケーションはもちろん、多人数でコミュニケーションをとる場合にも有効です。
布団にしてみたり、服をつくってみたり、ボールとして遊んでみたりと、新聞が子ども達のコミュニケーションツールとして活用できていれば、ねらいは十分達成したといえるでしょう。
⑥新聞紙で遊ぶときの触感や音、におい、色などの五感を働かせた発見をすることができる
少し硬い感じがするので「新聞紙のにおいを感じることができる」「新聞紙の柔らかさや硬さを感じることができる」など、細かく分けてねらいを設定してもよいと思います。
基本的には、遊びの中で味覚を除く五感を働かせることができていればねらいは達成となりますので、新聞紙の特徴に気付くことができた子はもちろん、特徴を生かした楽しみ方ができた子もねらいが達成されているといえます。
以上のねらいをもとに、ぜひ、具体的な遊びにつなげてみましょう。
具体的な遊び例
①新聞じゃんけん
新聞紙の上でじゃんけんをして、負けた人は新聞紙を一回折るというシンプルな遊びです。新聞紙の上に乗っていられなくなった人の負けとなります。じゃんけんを繰り返すうちに乗っていられる範囲が狭まっていくため、自然とバランス感覚を養うことができます。複数人や集団でもできるため、保育者対子ども達というかたちで、最後まで新聞紙の上に乗っていられた人の勝ちにしてもよいですね。新聞紙が破れてしまわないよう、室内シューズは脱いでおくことをおすすめします。
②新聞押し相撲
新聞紙の上で押し相撲を行います。新聞紙から足が出ていなかったとしても、一歩でも動いたら新聞紙を一回折ります。新聞紙の上で押し相撲ができなくなったら負けとなります。動いた方がどんどん不利になっていくという過酷な遊びです。この遊びも新聞じゃんけんと同様に、バランス感覚を養うことができますが、押し相撲の特性上、じゃんけんよりも高いバランス感覚が必要となります。なかなか勝負がつかない場合は、お互いの距離を縮めたり、制限時間を決めたりするのもよいでしょう。
③魔法の新聞
新聞紙に魔法をかけます。するとあら不思議…手を使わずに新聞を移動させることができます!!
…嘘です。すみません。新聞紙を体に貼り付けて歩いたり、走ったりする遊びです。このとき、手で新聞紙をつかんではいけないというのがポイントです。そうすると、ある程度のスピードがないと新聞紙が落ちてしまいますので、運動量を確保したいときにはおすすめの遊びです。新聞をバトン代わりにして、リレー形式で遊ぶのもよいでしょう。
④文字探し
出されたお題の文字を新聞紙の中から探すという遊びです。運動ではないため、休憩代わりに遊ぶとよいかもしれません。「あひる」「アンパンマン」「ドラえもん」などの言葉を制限時間内に見つけられるか競うと、集中して新聞に目を向けられます。ひらがなやカタカナ、ひらがなとカタカナが混じっているような文字を問題として出してみましょう。文字が読める年齢でないと難しい遊びであるため、実践する年齢に注意が必要です。
⑤紙鉄砲
新聞紙で紙鉄砲を作り、それを鳴らして遊びます。新聞紙は薄いため、上手く腕が振れない子どもでも比較的音が鳴りやすい素材です。ここで新聞紙が破けてしまうかもしれませんが、破れるくらい大きな音が出せたらベストです。破れなくても音が出せたら成功です。紙鉄砲はプロ野球のピッチャーが調整で行う練習法の一つでもありますので、ボールが上手く投げられない子どもは紙鉄砲で遊ばせるとよいかもしれません。
ここまでの遊びは新聞紙一枚で遊ぶことができます。紙鉄砲で新聞紙が破れてしまうかもしれませんが、まだまだ遊びには活用することができます。
⑥新聞コーディネート
破れた新聞紙を使って、コーディネートをしていきます。モデルを一人決めて、新聞を破ったり、ちぎったり、折り曲げたりしながら、服やバッグ、帽子、靴などを作っていく遊びです。新聞紙をフル活用して、モデルとなった人をおしゃれにしてあげましょう。創造力を養うためにも、いろいろな新聞紙の加工法がでてくるとよいですね。新聞コーディネートは新聞紙だけでも行うことができますが、セロテープを準備しておくと、いろいろな服や装飾品を作ることができますので、「新聞紙1枚」というコンセプトからは外れてしまうかもしれませんが、準備しておくと良いかと思います。
⑦新聞ドッジボール
これまで使ってきた新聞紙を一つの袋に入れて、ボールを作ります。そして、そのボールを使ってドッジボールを行います。新聞ボールは楕円だったり、小さかったりと大きさや形がまちまちです。そのため、いつも使っているボールとは勝手が違ってきます。ただし、そこが面白いところでもあるのです。ボールが上手く投げられなかったり、捕れなかったりすることで、いつもと違ったドッジボールを楽しむことができます。新聞ボールは柔らかいため、打撲などの怪我をする可能性もほとんどありません。ボール作りは片付けにもなりますので、一石二鳥です。
新聞紙で楽しめる遊びはまだまだ他にもありすが、ここまでが「新聞紙一枚」でできる遊びとなります。新聞紙が一枚でもあれば、少なくとも7つの遊びができるということが分かっていただけたかと思います。最近は新聞をとる家庭が減ってきていることから、新聞紙遊びも減ってきていますが、新聞紙は頭、体、心を養うことができる素材ですので、ぜひ遊びに活用してほしいと思います。
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