今回は大学における専任教員についてのお話をしようと思います。
専任教員(テニュア)
まず、専任教員(テニュア)について説明します。
そのため、基本的には首を切られることはありません。
大学教員の中で、テニュアとして雇用されている教員の割合は約6割と言われており、組織の半数以上を占めています。(引用:研究大学における教員の雇用状況に関する調査(2019年度))
このテニュアについて説明することは特になく、一般的な終身雇用と思っていただけたらと思います。
専任教員(テニュアトラック)
説明が必要なのはこちらの「テニュアトラック」という採用制度です。
こちらは簡単に言うと「期限付きの専任教員」となり、採用の際に定められた期限が過ぎると、基本的には契約が終了するという雇用の形です。
契約社員と言い換えたほうがわかりやすいでしょうか。
そのため、上記のテニュア教員とは違い、契約期間が切れたら自動的に退職することとなります。
このテニュアトラック制度は2011年から導入された制度なのですが、その目的としては、
①若手の教員に自立した研究環境を提供すること
②様々な研究環境を経験させ、人的ネットワークや視野の広がりを確保するために流動性を向上させること
などがあげられます。
そして、この制度が導入された背景としては、これまでの大学教員の採用は透明性が低く、縁故採用が多かったことや、研究者は徒弟制のようなものにとらわれてしまうことが多く、若手研究者が自立した研究環境で研究を行いづらかったということが挙げられています(文部科学省(2015)、テニュアトラック制の概要)。
テニュア審査
契約年数が決まっているテニュアトラック制ですが、契約年の最終年度となる年には、「テニュア審査」という審査を受けることができます。
これは、テニュアトラックからテニュアへと雇用条件を変えるための審査であり、実質、条件付き雇用から終身雇用を勝ち取る審査となります。
審査内容は各大学によって異なるのですが、多くの場合、契約期間中に発表した論文の数、研究資金の獲得状況、教育への貢献度など、大学教員としての仕事ぶりを総合的に評価して判断されます。
ただ、どちらかというと研究実績のほうを重視してみている大学のほうが多いと個人的には感じます。
テニュアトラック制に関する私見
ここまでは大学教員の雇用に関する内容を簡単に説明してきましたが、ここからは雇用制度に対する私見を述べていきたいと思います。
このテニュアトラック制ですが、もともとノーベル賞の審査対象となる研究が30代に行われていることが多いことから、若手研究者を競争させ、より質の高い研究成果を生み出そうとしているという背景もあります。
しかし、私の感覚では、競争を生み出すどころか、自分の雇用が安定しないがゆえに不安を抱えながら研究をしている方が多いように思えるのです。
また、テニュアトラック制を用いたからといって、若手研究者が自立できる環境を整えられているかというと、その点についても疑問が残ります。
ただ、テニュア審査については、審査を受けることさえすれば、ほぼ100%テニュアと慣れているという感覚です。
ここも注意が必要ですが、「審査を受けることができれば」という場合に限ります。
実際のところ、期限付き教員は審査を受けることができるかどうかわからないため、テニュア審査を受ける前に転出してしまうケースが多いのです。
また、採用する際にテニュア審査がないという旨を伝えられるケースも聞いたことがあります。
そのため、審査すら受けられない場合があります。
このように、本来は流動性を高めて研究の質を高めるために制定された制度なのですが、実際は目的通りに機能しているとは言えない現状があります。
そもそも、このテニュアトラック制度というものは、海外では一般的な制度となっており、アメリカなどのまねをして導入された部分もあります。
ただ、欧米と日本とでは研究環境に雲泥の差があり、日本では研究以外の仕事の割合が高すぎるため、研究だけで勝負するということは極めて困難です。
アメリカでは基本的にテニュアにもテニュアトラックにも研究に専念できる環境が整っているからこそ、純粋な競争率を高めることができるのです。
海外の制度を取り入れようとすること自体は悪いことだとは思いませんが、日本には日本の文化、歴史、背景というものがありますので、そのまま取り入れるというのはなかなかに厳しいものがあります。
定めてしまった以上、ある程度の年月は運用する必要があるかと思いますが、再検討しても良いのではないかと個人的には思っています。
最後は愚痴のようになってしまいましたが、今回は大学教員の雇用制度についてお話ししました。
大学教員を目指されている方にとっては重要な情報になりますので、この雇用制度を理解したうえで公募に応募することをお勧めします。
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