今回は文科省が2024年から実施予定の追跡調査についてお話ししたいと思います。
幼児教育の効果
本日、以下のニュースが飛び込んできました。
幼児教育の効果を追跡調査 学力、稼ぐ力など影響確認 1万人規模、5歳から成人後・文科省(時事通信) – Yahoo!ニュース
同時に、私は以前、以下のような記事を書いておりました。
Yahoo!ニュースでも触れられている「ペリー就学前プロジェクト」や私の記事で触れている「マシュマロテスト」については、幼児教育分野の研究において伝説的な実験となっていますが(マシュマロテストはおそらく現代では倫理的にできません)、幼児教育の重要性を訴えるためのきっかけとなったのは事実です。
今回の文科省の取り組みは長期的かつ大規模な調査になりますので、より細かい分析が可能となるのではないかと考えられます。
「非認知能力」という言葉は、現在の幼児教育界隈では溢れるほどに打ち出されている言葉ではありますが、具体的にどのような能力がどのような影響を及ぼすのか、ということについてははっきりとわかっていません。
というより、そもそも数値化できない能力を非認知能力と呼びますので、分析自体が難しいという問題があります。
ただ、今回の調査は国を挙げて行う調査ですので、最終的な結果が見えてくるまで生きているかわかりませんが、個人的には非常に楽しみな調査です。
残酷な現状
上記で紹介した記事でも書いていますが、現状、子どもの将来に大きな影響を与えるのは「親の収入」とされています。
もちろん、金を稼げは良いという単純な話ではありませんが、親の収入が高ければ様々な選択肢が増え、多様な経験が可能になるという点は否定できません。
お金がなくても多様な経験はできる、という声が聞こえてきそうですが、それは詭弁だと思っています。
お金があるほうが経験の幅が広がるのは言わずもがなです。
そのため、残酷ではありますが、親にできることは、金を稼ぎ、子どもに多様な経験をさせてあげることだといえます。
今回の文科省の調査でも、同様の結果となる可能性は個人的には高いと思っていますが、例えば、
忍耐力が将来の収入に最も影響を与える
情緒安定性が学力に最も影響を与える
といった具体的な相関、因果関係などがはっきりと見えてくると、結果は同じでも調査を行った意味というのは出てくるのではないかと思います。
期待は薄い
調査自体は楽しみではあるのですが、正直、期待は薄いと考えています。
なぜなら、英才教育でスポーツを始めた子どもが全員プロスポーツ選手になれないように、ピンポイントで幼児教育を施したとしても、全員が高収入な人間になれるかというと、そうではないからです。
教育というのは、様々な能力を伸ばしていく過程である一方で、自分の才能に気づき、その才能をどのように活かしていくのか、ということを見つけるための旅でもあると考えています。
つまり、生まれたときから備わっている能力は人それぞれ異なり、その能力の伸びしろや伸び方も様々であることから、「遺伝」という要素には抗えない事実も存在するのです。
スポーツの世界では3歳から特定のスポーツに取り組んだ子がプロになることもあれば、そのスポーツを始めて1年でプロ契約にこぎつける選手も存在します。
反対に、3歳から特定のスポーツに取り組んでもプロにはなれない子どもも大勢います。
スポーツの話に偏ってしまいましたが、人間には教育によって伸ばせるものと、教育によっては伸ばせないものが明らかに存在し、また、親の収入など、子どもにとっては外部要因とも言える要素も影響を及ぼします。
そのため、幼児教育によって経済的格差の固定化を防ぐことは非現実的だと個人的には思っています。
教育への期待
調査自体を楽しみにしながらも、厳しい指摘となってしまいましたが、そもそも「教育」に期待しすぎるのは良くないと思います。
教育によって変わることがあるのは事実ですが、時々、それを「自分の教育力」や「教員としての力」で変わったと勘違いされる方がいます。
子どもに与えた影響力に差はあれど、教育の力でその子の人生が大きく変わるのであれば、世の中はもっと豊かに平和になっていると思います。
何が言いたいのかというと、「教育にできることは微々たるもの」ということです。
以前の記事の繰り返しになりますが、教員にできることは「失敗するチャンスを与えてあげること」だけだと思っています。
教育に過度な期待をせず、できることを丁寧に実践していく。
それが教育者にできる最善だと個人的には思います。
話がそれましたが、今回は幼児教育の長期的調査の実施についてお話ししました。
繰り返しにはなりますが、調査自体は非常に楽しみです。
最終的な結果が見られる日まで、長生きしたいものです。
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