けがをする場所と部位トップ5~子どもはどこでどんなケガをする?~

運動・健康

今回は子どもがどこでどんなケガをすることが多いのか、ということについてお話ししたいと思います。

具体的には、保育園でのデータに基づいてお話をしますので、幼稚園やこども園、家庭での状況は多少違うかと思いますが、同年代の子ども達がケガをしやすい場所と部位についての傾向はつかめるかとは思います。こちらの記事を確認していただき、新しい視点や注意点を提供できれば幸いです。

※基データは令和3年に発表された結果をもとに作成しています。

◎子どものケガが発生しやすい月

まずはケガが発生しやすい月についてお話ししたいと思います。独立行政法人日本スポーツ振興センター(JSC)が発表した令和3年のデータを見ると、最もケガが発生しやすいのは「10月」となっています。反対に、最もケガの発生が少ないのは「4~5月」となっています。10月にケガの発生が多くなっている理由としては、運動会などの体育的行事が10月に行われることが多いことが理由と思われます。4~5月にケガが少ない理由としては、入園したての子ども達がまだ環境に慣れておらず、活発に活動する時間が比較的短いからだと思われます。

子どものケガが発生しやすい月
令和3年度「学校の管理下の災害」、独立行政法人日本スポーツ振興センター(JSC)をもとに作成

◎子どものケガが発生しやすい曜日

次にケガをしやすい曜日についても見てみたいと思います。曜日については、正直顕著な特徴は見られませんでした。ただ、全体的に週初めよりも週末に近づくにつれてケガの発生件数が多くなっています。週末への期待から興奮してしまった、保育者の疲れが蓄積し、目が行き届かなかったなど、様々な理由が考えられますが、週末に向けてケガが増えているという事実を知るだけでも、注意力を高めるきっかけにはなるのではないでしょうか。

子どものケガが発生しやすい曜日
令和3年度「学校の管理下の災害」、独立行政法人日本スポーツ振興センター(JSC)をもとに作成

◎子どもがケガをしやすい場所

それでは子どもがケガをしやすい場所についてみていきましょう。基データは独立行政法人日本スポーツ振興センターが発表している【令和3年度「学校の管理下の災害」】の保育所(0歳~6歳)データとなっています。

1位:教室(保育室)

これは当然の結果かと思います。載せる必要もないかと思いますが、ランキングを変えるわけにはいかないため載せています。子どもたちが保育園等で活動するのが最も多い場所である教室(保育室)では、必然的にケガが多くなってしまいます。これは活動時間が長いということが一番の理由になるかと思います。

2位:運動場・校庭(園庭)

こちらも1位に続き、説明のいらない場所であるかと思います。1位、2位と引き続き申し訳ありませんが、意外でも何でもないかと思います。しいて言うのであれば、室内よりも活動量が多くなると思われる運動場のほうが教室(保育室)よりもケガが多くなるのはどうしてか、ということが疑問になるかもしれませんが、単純に運動場に行かない子がいるからだと思われます。園生活を室内だけで過ごす子がいたとしても、運動場だけで過ごす子はいないように、やはり園生活は室内での活動が主となるため、純粋に活動時間が長く、ケガをする機会も多くなってしまうということだと考えられます。

3位:遊戯室

こちらも説明がいりません。大変申し訳ありません。このランキングで面白くなるのは5位からですので、どうか5位まで見てからサイトを閉じてください。遊戯室がある園とない園があるため、教室(保育室)や運動場よりも低くなっていることが考えられますが、基本的に遊戯室は保育者にコントロールされた場で使われることの多い場所であると思います(例えば、体育教室や集会のようなものなど)。そのため、各個人が自由に遊ぶ機会の多い教室(保育室)よりも少しケガの報告が少ないのだと思われます。

4位:廊下

このあたりから予想が難しくなってくるのではないでしょうか。廊下は昔から「走らない」ということが指導される場所ですが、そのような指導が生まれてしまうくらい、子ども達は走ってしまう場所です。走るだけではケガはしないのですが、いかんせん通路であるため広くないことがほとんどだと思います。そのため、子ども同士の衝突などが起こりやすくなってしまいます。

5位:ベランダ

ようやく今回のランキングの目玉となりました。ベランダは意外と思われる方もいらっしゃるのではないでしょうか。まずベランダに出てもいい園と出てはいけない園があると思いますので、ケガの絶対数が少なくなると思いますが、それでもベランダでケガをすることが5番目に多くなっています。ベランダは室内とも室外とも言い難い側面がありますので、外に出た気持ちになって活動量が増えてしまうのかもしれませんが、階数が高くなると転落事故も考えられるため、非常に危険な場所となります。どのようにしてケガが起こるのか詳細は発表されていませんが、ベランダに子どもを出す場合はいつも以上に注視が必要です。

※6位:便所

5位までと書いておきながら6位まで発表しているのですが、6位が一番意外な場所だと思いましたので、番外編として発表しています。6位は便所ということで、トイレでのケガが多くみられるということがわかります。ちなみに、これは令和3年発表の資料だけでなく、例年ケガの多い場所として上位に挙がってきています。どうしてトイレでのケガが多いのかはわからないのですが、大人が常時いる場所ではないため、ある意味での死角になっているのではないかと思います。そのため、トイレに行く場合もケガへの意識を緩めることなく向かわせる必要があります。

子どものけがに関するデータ
令和3年度「学校の管理下の災害」、独立行政法人日本スポーツ振興センター(JSC)

◎子どもがケガをしやすい部位

続いて、子どもがケガをしやすい部位についてみていきましょう。こちらも基データは独立行政法人日本スポーツ振興センターが発表している【令和3年度「学校の管理下の災害」】の保育所(0歳~6歳)データとなっています。

1位:(上肢部)

1位は肘のケガが多いという結果となりました。中でも最も多いケガの種類が「脱臼」となっています。幼児期は肘内障といって肘の脱臼が非常に多くみられる時期です。そのため、手を強く引っ張ったり、引っ張られるような状況は極力避けるべきだといえます。そしてこれは無意識に行ってしまっている場合も多くあります。例えば、以下の写真のように、仲睦まじい親子や家族が手を引っ張り上げながら歩いたり、赤ちゃんと遊んでいる時に手を引っ張ったりした際にも起こる可能性があります。もし、画像のような遊び方をしていた方がいた場合は注意して遊ぶようにしてみてください。

肘内障について
引用:武蔵小杉整形外科

2位:眼部(顔部)

2位は目のケガが多くなっています。ケガの種類としては「挫傷・打撲」が多くなっており、いわゆる打ち身が多いといえます。眼球そのもののケガというわけではなく、目の周辺のケガが多いと予想されますが、低年齢児ほどとっさの転倒を回避する能力が未熟なため、顔から転倒してしまうことが多いのではないかと考えられます。ひっかき傷もカウントされているかどうかは定かではありませんが、目の(周り)ケガが多いという事実は認知しておく必要があると思われます。

3位:歯部(顔部)

3位は歯のケガが多くなっています。ケガの種類としては「脱臼」が多く報告されています。2位の眼部も同じですが、顔のケガが多い傾向にあり、歯が生えてきた子どもであれば、ぶつかったり転倒したりした衝撃で歯を損傷することが多いようです。特に衝撃で歯が抜けてしまったり、ぐらぐらしたりする脱臼はよく見られるケガといわれています。乳歯とはいえ、歯が折れたり欠けたりしたらパニックになる可能性もあるかと思いますので、歯を損傷した場合の対処法などは知っておく必要があるかもしれません(可能な限り30分以内に歯科医に見せるとともに、歯が損傷している場合は乾燥を防ぐために牛乳に漬けて持っていくのがいいようです)。

4位:頭部

4位は頭部となっています。ケガの種類としては「挫傷・打撲」が最も多く報告されています。頭部のケガは顔部のケガと同様に転倒や子ども同士の接触で起こる場合が多いと考えられます。体のバランス的にも頭が大きい乳幼児期は、どうしても頭や顔のケガが増えてしまうのかもしれません。ただ、頭のケガは一歩間違うと死に直結する大事故になる可能性もあるため、対処には注意が必要です。

5位:手・手指部(上肢部)

5位は手のケガとなっています。ケガの種類としては「挫傷・打撲」が最も多く、次いで「骨折」となっています。多くの場合は転倒を回避するために手をついたり、動かすことの多い部位であることからケガが多くなっているものと思われます。大人からしたら手のケガが5位になっているという時点で驚きかもしれませんが、それほどまでに顔、頭のケガが多く、転倒や接触を上手く回避する能力が未熟だということがわかります。年齢が上がってくるにつれてケガの種類も変わってきますが、3歳以上の子どもが基本となる幼稚園でも同様のケガ発生傾向がみられるため、歩行が安定してくる3歳以上でも手のケガより顔、頭のケガが多くなることが予想されます。

子どもがケガをする部位データ
令和3年度「学校の管理下の災害」、独立行政法人日本スポーツ振興センター(JSC)

今回は子どものケガについてお話してみました。データに基づいてご紹介しただけですが、どのような場所でどこをケガをするのかを知っているだけで、注視する視点が変わってきたり、意識を高めて見守るべき場合が違ってくるのではないかと思います。データは毎年更新されますので、これを機に保育者の方はもちろんのこと、保護者の方も毎年チェックしてみてはいかがでしょうか。

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