今回はボール遊びのねらいについて考えていきたいと思います。
ボール遊びは個人だけでなく、集団でも様々なねらいをもたせることができます。そのため、ボールの特性を生かしながら、幅広い遊びの設定が可能となります。可能であれば、技能の向上、社会性の発達の両方をねらいに組み込んでみましょう。
これまでもいくつかの遊びでねらいを考えてきていますが、一般の方向けというよりは保育者の方向けの記事となります。保育者の方で指導案作成に困っている場合など、活用機会があればぜひご活用ください。
ほかの遊びのねらいについても記事を書いていますので、そちらも併せてご活用ください。
尚、少し硬い表現を使っていますので、実際の保育などに使用される場合はやわらかい表現に変えてご利用いただけたら幸いです。
①ボールに合わせて自分も動き、体の動かし方を知る。
このねらいは1歳~2歳ごろまでのねらいとなります。ボールは他の道具と違って、転がったり、弾んだり、回ったりと、ボールにしかできない動きがあります。そのため、転がっているボールを追いかけたり、一緒に弾んでみたり、回ってみたりしながらボールの動きをまねするすることで、様々な体の動かし方を知ることができます。
②ボールでのやりとりを通して、友達や保育者とのコミュニケーションを深める。
ボール遊びは一人でもすることができますが、やはり二人以上で遊ぶと遊びの幅が広がるだけでなく、遊びを通してコミュニケーションを深めることができます。愛着形成の必要な幼児期において、ボールを使ったコミュニケーションは重要な遊びであると言えます。
③ボールを投げたり蹴ったりしながら、体の動かし方を知る。
①のねらいと似ていますが、①はボールの動きをまねしていったのに対し、こちらはボールを投げたり蹴ったりと動かしながら体の使い方知るというものです。投げる、蹴るという動きは日常生活には必要ない動きであるため、遊びの中でしか養うことができません。そのため、ボール操作を伴う遊びは動きの幅を広げる貴重な機会と言えます。
④ボールの特性(転がる、弾む等)を知る。
なんとなく使っていたボールの特性を改めて知ることで、遊びの幅が広がることがあります。転がる、弾む、つぶれる、回るなど、それぞれの特性を生かした遊びを経験し、他の道具を組み合わせたボールの活用方法なども見つけることができます。また、ボールの純粋な面白さにも触れることができます。
⑤多様な動きを組み合わせてボールを操作する。
4歳ごろからは様々な動きを組み合わせて遊んでみましょう。例えば、ボール投げ上げてボールが落ちてくるまでに拍手をしてみる、ボールをつきながら移動してみる、などの何かをしながら何かをするという動きになります。二つの動作を同時にするため、低年齢児には難しいねらいになりますが、動きの組みあわせができるようになると遊び方も高度になりますので、どんどん挑戦してみましょう。
⑥ゲームのルールを理解するとともに、友達を応援したり、励ましたりと、集団で遊ぶ楽しさを経験する。
これは心情的なねらいとなりますが、ボール遊びは複数で行うことが多いことから、集団ならではの応援や励ましが重要となります。チームみんなで協力しながら課題達成を目指すことで、社会性を高める機会にもなります。
⑦ボールの取り合いを通じて、自分の意見を主張したり、相手の気持ちを察したりする経験を重ねる。
⑥のねらいと重なる部分もありますが、問題解決を図るためには大切なねらいとなります。幼児はまだ相手の気持ちを察したり、考えたりする経験が浅いため、ボールの取り合いが頻繁に起こります。ただ、取り合いを行う中で相手の気持ちを考えたり、自分の気持ちを抑えたりする経験をするため、大人がすぐに仲裁に入るのではなく、少し様子を見ることができると尚良いかと思います。
⑧友達の動きを見て、自分の動きを調整する。
言葉ではシンプルですが、非常に高度なねらいになります。サッカーやドッジボールなどができる年齢になると、友達の動きを見ながら自分の動きを考える必要が出てきます。チームで動く遊びならではのねらいですが、集団遊びでしか養われない力であるため、重要なねらいとなります。
⑨チーム分けや勝ち残りの人数を数えるなどの経験を通して、数の概念を認識する。
このねらいも集団遊びならではのねらいとなります。チームに分かれて行う遊びでは、人数という数の概念に必ず触れなければなりません。そのため、チーム分けや勝ち残りの人数などを数える中で、数という概念に触れる経験を積むことができます。
⑩勝ち負けに触れ、嬉しい、悔しいといった気持ちの経験を積み重ねる。
現在は競争させることをよくないという意見もありますが、競争を行うことで養われる感情があるのも事実です。負けて悔しい、勝って嬉しいなど、勝ち負けに触れることで、様々な感情の経験を積むことができます。短期間では達成が難しいこともありますので、中長期的なねらいとして設定すると良いかもしれません。
今回はボール遊びのねらいについて考えてみました。ボール遊びは個人から集団まで遊ぶことができ、年齢が上がるとドッジボールやサッカーといった複雑な遊びも楽しむことができるようになります。ボール遊びを保育で行う際に参考にしてもらえたら幸いです。
参考文献:「保育と幼児期の運動遊び」岩崎洋子 編著 吉田伊津美・朴 淳香・鈴木康弘 著 B5判 218頁(2018/02/15)、ISBN978-4-89347-274-8
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