大学教育における視点の獲得

雑記

今回は、大学での教育における視点の獲得についてお話をしたいと思います。

大学における学修

大学における学修には様々なものがあります。

進学する専門分野によって、より特化した知識、技能を学びます。

そして、忘れていきます。

おそらく、大卒の方で大学生時代に学んだことを聞かれて、即答できる人は少ないのではないでしょうか。

大学は知識、技能を学ぶ場所ではありますが、知識、技能、特に座学で学んだ知識に関しては、使わなければ忘れてしまうのが人間という生き物です。

そういう生き物ですので、仕方ありません。

では、大学で学んだことは忘れてしまうから、大学での学びは意味ないのか、というとそうではありません。

大学で学んでいること、学んできたこと、学んでほしいことの一つに「視点の獲得」というものがあります。

現在学んでいる方もいれば、無意識のうちに学んでいる方、これから学んでほしい方という願望を全てひっくるめてお話しします。

視点の獲得

冒頭でもお話ししたように、大学では多くの知識、技能を学びます。

しかし、それ以上に重要な学修要素として、「視点の獲得」が挙げられます。

視点の獲得とは、簡単に言い換えると、「物事への見方や考え方を身につける」ということです。

例えば、公園で裸足で遊んでいる子どもがいたとしましょう。

その子を見て、皆さんは何を思いますか?

なぜ裸足で遊んでいるのか。
昔は裸足で遊ぶのが当たり前だったな。

などといった感想をもたれるかもしれません。

ここで、この子どもについて多角的な視点で考えてみましょう。

「安全」という視点を持っていれば、落ちているもので足を切ったり、石を踏んでしまったりして、ケガをしないか、と心配することができます。

「運動」という視点を持っていれば、裸足で遊ぶことで、土踏まずが形成されそうだ、足の裏を含めた感覚が鋭敏になりそうだ、といった運動発達の期待をもつことできます。

「福祉」という視点を持っていれば、裸足で遊んでいるということは、もしかしたら靴を買うお金がないのかもしれない、親はどこにいるのだろう、家は近所なのだろうか、という心配をすることができます。

「環境」という視点を持っていれば、この公園は裸足で遊べるほど土が柔らかいのか、裸足で遊べるのはこの公園だけなのだろうか、周辺の環境はどうなっているのだろうか、という環境構成に目を向けることができます。

このように、多くの視点を持っていれば多くのことに気が付くことができ、多くのことに疑問を持つことができます。

この「視点の獲得」という物事への見方、考え方を身につけることこそが、大学教育の最大の目的だと言えます。

ただ、「これから視点を獲得します」という授業は基本的にはないでしょう。

私の授業ではあえて視点の獲得について解説することはありますが、多くの授業では視点の獲得について触れることはないでしょう。

視点の獲得というのは、意識的にすることもあれば、無意識的に身についていることもあるからです。

それは日々の授業を重ねることで身につくこともあれば、私生活で身につくこともあります。バイトで身につくこともあれば、サークル活動で身につくこともあるでしょう。

ただ、冒頭でもお話ししましが、大学では多くの知識、技能に触れます。それは受験やテストの点数のために行う勉強ではなく、専門分野における「視点の獲得」につながっていきます。

教育学部であれば、模擬授業などを重ねる中で、良い授業の条件などに徐々に気づいていけるでしょう。

それは、「視点の獲得」が関わっているからです。

もちろん、知識や技能が基盤となり気づける部分もありますので、知識や技能を含めた「視点の獲得」といえるでしょう。

視点と疑問

知識や技能を学ぶことで新たな気づきがあったり、授業中でグループワークや議論をする中で気づきがあることもあるでしょう。

そのような繰り返しの中で視点は増えていき、同じ物事を見ていたとしても、視点の数によって見方が全く異なってきます。

そして、多くの視点を獲得しているということは、多くの疑問へと繋がります。

研究というのは、疑問を解決するために行うものであり、この疑問を持つこと、つまり、リサーチクエスチョンを見つけることこそが、研究の始まりであり全てであると言えます。

大学は多くの視点を獲得し、多くの疑問をもち、その疑問を解決するために研究を行う。

そのような場所であってほしいのです。

女性の目

ちなみに、今回の「視点の獲得」については、決して私が発見したように偉そうに語れることではなく、私よりも崇高な教員の皆様方がおっしゃっていたことであり、知っている人からすれば当たり前のことかもしれません。

ただ、大学は卒業すれば忘れてしまう知識、技能を身につけるだけの場ではなく、普段の生活にも結び付く「視点の獲得」に関わる場所であることを知ってほしかったというのが今回の記事の発端です。

大学に行く目的は人それぞれだと思いますが、「視点を獲得する」という目的があれば、授業の受け方も違ってくるかと思いますので、現役大学生の方はぜひ、意識して視点の獲得に勤しんでほしいと思います。

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