今回は「シラバス作成」についてお話ししたいと思います。
小・中・高校の教員とは違い、大学教員特有の仕事の一つとして「シラバス作成」があります。
シラバスとは、簡単に言えばこれから行う授業の概要が書かれた授業計画書のようなものであり、学生はこのシラバスを確認して、受講する授業を決めます。
自分で授業を選択していく大学ならではの制度であると思います。
そして、次年度のシラバス作成はおおよそ2月中旬から3月中旬にかけて行われます。そのため、ちょうどこの記事を書いている時期は各大学でシラバス作成が行われていることでしょう。
かくいう私もシラバスを作成いたしました。
このシラバスなのですが、これまではかなりテキトーに作られていることが多かったのですが、近年は補助金の項目等にもシラバス作成に関する項目が入ってきていることから、これまでよりも厳しくチェックされることとなっています。
授業概要欄
例えば、各回の授業概要欄に
「第1回:板書の仕方①」
「第2回:板書の仕方②」
と書いてあった場合、この時点でアウトとなります。
文科省からの調査や、外部評価などが入った場合、まず間違いなく指摘されます(上手くすり抜ける場合もありますが…)。
なぜ上記の記載がアウトなのかと言いますと、概要欄の内容が抽象的だからです。
授業概要には、具体的な内容を記載することが求められますので、上記のような形で書く場合は
「第1回:板書の仕方①(めあてのたて方と記述位置)」
「第2回:板書の仕方②(色チョークの使い分けについて)」
といったかたちで、同じ板書の書き方であっても、具体的な内容を示す必要があるのです。
もちろん、ここで示した例は最低限の書き方であり、より詳しく書くことに制限はありません。
予習、復習について
また、あまり知られていないかもしれませんが、大学の授業というのは基本的に予習、授業、復習の3段階で成り立っており、授業前の予習と授業後の復習をすることが前提で授業が行われています。
ややこしくなりますが、少し説明すると、大学では授業を受けると、その授業の内容を理解したという証明として「単位」というものが与えられます(学設置基準(昭和31年文部省令第28号))。
この「単位」というものは、基本的に45時間の学修を必要とします。
つまり、45時間の勉強をしたうえで与えられるものなのです。
ただ、その45時間の授業のうち、講義及び演習であれば15時間~30時間の範囲においては大学の授業で学修する時間とされています。(実験、実習及び実技については、30時間~45時間の範囲)
大学の授業はだいたい1コマ90分(1.5時間)です。
そして、それが15回行われるため、1.5時間×15回=22.5時間ということになります。そのため、多くの大学では22.5時間を授業で、残りの22.5時間を予習、復習で学ぶ必要があるわけです。
このように、大学の授業は予習と復習が前提となって行われていますので、シラバスにも予習、復習の内容とその時間について記載することが求められています。
ディプロマポリシーに照らし合わせた到達目標
大学にはいろんなポリシーがあります。ディプロマポリシー、アドミッションポリシー、カリキュラムポリシー、などなど…
今回は私の大学で関連性の記述が必要なディプロマポリシーだけ取り上げます。
ディプロマポリシーは「学位授与の方針」と呼ばれ、簡単に言えば、卒業要件のようなものです。
こういった知識、技能をもった、このような人物に学位を授与しますよ、という方針のことです。
私の大学では、各授業の到達目標と、このディプロマポリシーの関連性を書く必要があります。
自分が大学生の頃は、このような記載は見たこともありませんでしたが、最近は授業と学位授与の関連がしっかりとなされていることが確認できなければなりません。
まあ、当然と言えば当然なのですが…
成績評価
最も考えなければならない項目の一つに、成績評価があります。
こちらも、例えば
「出席:40%、レポート:20%、期末テスト:40%」
という記載であれば、アウトをくらいます。
どこが問題のかというと、「出席:40%」の部分です。
大学の授業は出席することが前提とされていますので、その前提条件を評価対象とすることはふさわしくないとされています。
そのため、当たり前のことである出席は、評価対象としてはいけないのです。
また、基本的にこの成績評価の方法は1回目の授業で示しておかなけらばならないため、途中で変更することが基本的にはできません。
(途中で変更する人もいますが、学生からツッコミを受けた場合、トラブルに発展しやすいです)
学生もシラバスのこの部分だけはしっかりと読んでいることがありますので、きちんと示し、説明を行う必要があります。
他にも参考図書や教科書、備考、連絡先など書くことはありますが、主要な項目としては上記で紹介した項目となります。
私の大学では、これらの項目において、正しく記載されているかをチェックし、記載されていなかった場合はやり直しをしなければなりません。
まあ、次年度の授業計画を立てるという点では、自分のためにもなりますので、苦痛ではありませんが、面倒ではあります。
あくまで計画書ですので、途中で内容が変わることはありますが、最近は学生との契約書ともいわれ、内容の変更も極力行わないよう通達がきておりますので、シラバスの重要性がぐんぐん高まっているのを感じます。
大学教員を目指されている方は、1年目のシラバス作成が最も大変かと思いますので、ぜひ一つの仕事内容として把握しておいていただけたらと思います。
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