なぜこの話をしようと思ったかというと、国から配られる研究資金の中でも最も知名度の高い「科学研究費助成事業(通称:科研費)」の発表が来週に迫っているからです。
大学教員を含む研修者はこの科研費をとるために必死に申請書を書きますので、科研費の採択発表は一大イベントとなります。
この一大イベントが迫っているということもあり、皆さんにも研究とお金についてのお話を共有しようと思った次第です。
さて、これまでの記事でも何度も書いていることですが、大学教員は研究者という側面を持っており、研究の成果を外部に発信するという役割を担っています。
そのため、日々研究へと励み、その成果を授業はもちろん、論文や学会発表などで発信する必要があります。
研究を進めるためには、分野にもよるのですが、研究費用が必要となります。
多くの場合、実験などが多い理系の研究のほうが費用が掛かる傾向にあり、文系の研究は比較的費用が低く抑えられる印象です。
研究費はなぜ必要?
では、なぜ研究費は必要になるのでしょうか。
これは本当に人によるのですが、理系であれば、実験器具や実験のための動物(ネズミなど)、薬品、アンケート用紙とその作成費、分析ソフトなど、主に実験とその分析に必要な器具を購入するために費用がかかります。
一方、文系であれば、文献調査のために各地を訪問するための旅費、文献を取り寄せるための郵送費、インタビューを行う際の謝金など、文献調査を行うための費用がかかります。
そして、文系、理系問わず共通してかかる費用としては、人件費が挙げられます。
研究をスムーズに効率よく進めるためには、基本的にマンパワーが必要となりますので、実験や分析の際の助手や学生アルバイトなどを雇用して、研究の手助けをしてもらうことがあります。
この人件費に関しては、研究の規模が大きくなり、組織が大きくなるほど費用も大きくなっていきます。
また、複数の研究者同士で共同研究を行っている場合は、研究の打ち合わせなどの旅費がかかったり、研究成果を発表するための学会参加費などもかかります。
ここに挙げた費用の例はほんの一部ですが、その他にも研究を進めるためにはお金がかかるというのが実際です。
なかには研究費を必要とせず、自分の力で全ての研究を進められる方もいらっしゃいますが、費用があるに越したことはなく、効率よく研究を行うためには必要であると私は考えています。
研究費の獲得は実績となる
何より、研究費(競争的資金)の獲得は自分の実績となります。
研究費を獲得するためには厳しい審査があり、その審査を通過した人だけが研究費を使用することができます。
お金を出す側からすれば、どうでもよい研究にお金は払いたくないかと思いますので、厳しい審査をして、面白そう、自分たちの目標を達成してくれそうな人を選ぶのは当然ですよね。
そのため、研究費を獲得できる、というのは、研究を推進することができると認められたということになりますので、研究者しての実績となります。
研究費の獲得履歴がどの程度の実績となるのかは、獲得した研究費の額や研究の規模によって見方が変わるかもしれませんが、少なくとも、査読論文と同等かそれ以上の価値があると私は考えています。
研究費の獲得が大学教員としての採用にも影響を与えることは、いうまでもありません。
大学は教員の研究費獲得で大きくなる
そして、研究費の獲得は、個人の実績となるだけではなく、獲得した人が所属する大学にも大きなメリットを生み出します。
例えば、科研費などは「直接経費」と「間接経費」という資金配分で成り立っており、簡単に説明すると、
・研究者が自由に使える研究費:「直接経費」
・所属機関の機能向上や環境整備に使える研究費:「間接経費」
となります。
間接経費は基本的に直接経費の3割と設定されているため、100万円の直接経費を獲得した場合は、別途30万円が間接経費として所属機関へと配分されます。
このように、競争的資金を獲得する研究者が多ければ多いほど、所属機関もも財政的に潤っていくこととなるため、競争的資金のの獲得は大学運営に対して多大な貢献をすることになるのです。
今回は研究とお金についてお話ししましたが、正直なところ、私は研究費などなくとも研究はできると考えていました。
しかし、実際研究に触れていく中で、やはり研究資金は必要だという認識へと変わっていっています。
研究費をそれほど必要としない文系の研究であったとしても、インタビューをさせてもらったり、授業の実践をさせてもらったりする機会があります。
例えば、その時に謝金があるのとないのとでは、受け入れてくれる人や学校も違ってきます。
もちろん、無償で協力してくださる方もいますが、協力者の時間を自分が奪うこととなる、と考えた場合、感謝の気持ちとして謝金をお渡しするのは至極真っ当なことだと思います。
私はまだ競争的資金の獲得には至っていませんが、チャレンジはしています。
ひとまず、2月末に発表される科研費の採択結果を確認して、その後の研究にも尽力しようと思います。
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