今回は教育実習という科目についてお話ししたいと思います。
「教育実習」という科目を持つ重責
現場経験がある方が大学教員になると、多くの場合実習関係の科目を担当することとなります。
関係科目であればまだよいかもしれませんが、「教育実習」を担当することとなると、なかなかに大変となります。
それぞれの科目に大変さはありますが、教育実習に送り出す準備はおおよそ1年前から始まります。
教育実習に行く側では気づくことができない、その裏側についてお話ししていきたいと思います。
校種や大学によって手続きに違いはあるかと思いますので、一例として見てもらえたらと思います。
実習期間の設定
まず行うのは実習期間の設定です。
1年後の教育実習を見据えて、実習期間を設定します。
実習を行う学校にも都合がありますので、ぴったりと全員が重なることはありませんが、おおよその期間を設定する必要があります。
夏休みに設定する大学もあれば、5月~7月の前期に設定する大学もあります。
多くの場合4年時に行いますので、リスクのある後期に設定する大学はあまり聞いたことがありませんが、全国にはあるかもしれません。
実習校の選定
実習期間の設定が終わったら、実習校の選定を行います。
多くの学生は母校を選択しますが、母校から実習受け入れ許可が出なかった場合や、別の高校を選ぶ学生も中にはいます。
教育学部などの場合は母校ではなく、指定の実習校がいくつか決まっており、その中で割り当てることとなるため、選定という部分では少し楽になるかもしれません。
実習校への依頼
実習校の選定が終わったら、実際に実習の依頼を行います。
この依頼は大学にもよるかもしれませんが、学生自身で学校に伺い、交渉する大学もあれば、学校側で依頼文書を送付して回答をもらう大学もあります。
学生自身が交渉する場合も後々改めて依頼文書を送るのですが、自分でお願いに行くという大学も存在します。
教育学部などで実習校が母校ではなく、大学側が一括でする場合、学生はこの手続きを知らぬままいつの間にか実習校が決まっているということとなります。
依頼については基本的に受け入れてくれる学校がほとんどなのですが、稀に学校側のイベントやスケジュールと合わず、断られることもあります。
そのため、確実に実習受け入れの文書を受け取るまでは油断できません。
学生指導
実習への依頼が完了すると、学校間のやりとりはひと段落です。
ただ、ここからは学生への指導が始まります。
教育実習の事前指導を含め、学生プロフィール、出勤簿、日誌などの準備も必要となってきます。
学生の頃は教育実習に行く前、ひたすら模擬授業を行っていた記憶がある方もいらっしゃるかもしれませんが、それはあくまで「授業内」での話であり、「授業外」においても教育実習担当者は仕事があります。
学生プロフィールや日誌を渡すということは、同時に書き方についても指導しなくてはいけません。
指示を出したからと言って、その通りにできるとも限らず、誤字脱字を始め、文量、内容などもチェックをします。
そして、体裁が整った時点で初めて、郵送の手続きがとれるわけです。
実習巡回
事前指導も終わり、いよいよ教育実習が始まると、教員は巡回指導にいきます。
教育実習は基本的には母校で行うと先述しましたが、それがゆえに、全国に飛び回り、巡回指導を行います。
学生の研究授業に合わせて訪問することが多いのですが、ありがたいことに、その後の授業研究会にもご丁寧にお招きいただくこともあります。
そうすると、簡単に1日が終わります。
※教育学部など、大規模な教育実習が行われる場合は研究授業だけ担当教員かゼミの教員が顔を出し、その後の反省会はそれぞれの教室で行われることもありますが、教育学部の場合は人数が多すぎるため、反省会まで教員が出ることは稀です。
場合によっては、指導の仕方を問われることもありますので、巡回中も気を抜くことは許されません。
事後指導
ようやく実習が終わったら、実習の振り返りとともに、事後指導が始まります。
実習が終わった際のお礼状の投函確認なども併せて行います。
事後指導までくるとようやく終わりが見えてきますが、それと同時に、翌年の実習の準備が始まります。
無限ループにおける終わりと始まりが見え隠れする時期となります。
以上、今回は教育実習についてお話ししました。
大学によっては教職課程センターという教職課程専門の機関があり、この機関が事務手続きなどを担ってくれる場合がありますが、教育学部などの教育専門の学部でない限り、あまり期待はできません。
そうなると、上記のような流れで担当教員が進めていくこととなります。
手続きも大学によって違うことはありますが、総じて、教育実習の担当というのは重責を背負うこととなります。
小学校から大学教員を目指されている方は、多くの場合教育実習またはその関連科目を担当する確率が高くなりますので、採用の際に「教育実習」というワードが見えた場合は腹をくくらなければならないかもしれません。
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