単位をくれる先生

大学教員の仕事

今回は単位をくれる先生についてお話ししたいと思います。

単位をくれる先生は優しい?

私は学生時代、単位をくれる先生は優しいと思っていました。
実際に雰囲気が柔らかい先生方が多く、人間的にも優しい先生が多かったのかもしれません。

現在は私自身が大学で教員をすることになり、単位を認定する側になりましたが、この考え方に対して改めて考えてみると、「単位をくれる先生は面倒くさがり(なことがある)」と感じるようになっています。

中には、優しさから単位を与えている先生もいるのかもしれませんが(評価者としてはダメです)、「面倒だから単位をだす」という先生も一定数はいるということをお伝えしておきます。

では、「面倒だから単位を出す」というのはどういうことなのでしょうか。

機械的に評価できない科目もある

面倒だから単位を出す理由についてお話しする前に、評価についてお話しておかなければなりません。

基本的に評価は第1回目の授業において評価基準を学生に示す必要があり、シラバスにも明記することが求められています。

私が働いている大学においても、この点は厳しく指摘されるため、評価基準が明確でないとシラバスを外部に公表することができません(大学によって差があります)。

そして、その評価基準は学生にもわかるように明確でなければなりません。

最も望ましいのが、「〇〇すると〇〇点」といった「ルーブリック」と呼ばれる評価法が用いられていることです。

この基準を満たせば、この評価になりますよ、というのを明確に示すことができます。

全教員の全科目がこのルーブリック評価になればよいのですが、ルーブリックになったとしても、「教員の主観」が排除できない科目もあります。

それは、「表現」や「コミュニケーション」といった目に見えない技術であり、数値化することが難しい内容を含む科目です。

いわゆる、グループワークなどでの「積極性」や「リーダーシップ」などを評価する科目においては、基準を作ることが難しくなります。

挙手の回数や発言の回数などで評価することもできますが、挙手が少なくても的を射ている意見を言う学生もいたり、自分の発言は少なくても上手に周りの意見を引き出す学生もいたりしますので、ただ挙手をすればよいというのは個人的に本質を見誤っていると感じます。

また、スポーツにおける「体操」や「フィギュアスケート」などの表現を評価する競技をイメージしてもらえたらわかるかと思いますが、表現力という個人の感性が関わってくる内容となると、主観を抜いて評価することはできません。

このように、学生の「姿勢」や「コミュニケーション力」などが授業内容に含まれる科目となると、どうしても評価者の主観が関わってくるのです。

前置きが長くなりましたが、何を言いたいのかというと、「科目によっては機械的に評価をすることが難しい」、ということです。

そのため、評価者の主観が含まれる評価項目が入ることとなり、その評価項目では「授業に対する姿勢」や「授業中の参加意欲」といった学生の「印象」が反映されやすくなるのです。

面倒だから単位を出す

テストの点数だけで機械的に評価ができれば悩むことはないのですが、評価者の主観が入る科目では、単位認定が危うい60点付近をさまよう学生に対しては、単位を認定するか、不認定とするかということで非常に悩むことになるわけです。

ここでタイトル回収となりますが、優しさで単位を認定する先生もいれば、面倒だから単位を出す先生もいるのです。

どういうことかというと、60点付近をさまよう学生というのは、正直なところ、優秀とはいいがたく、授業に対する意欲も低いことが大半です。

よほど難しい内容の科目でない限り、授業を意欲的に受けていれば60点付近をさまようことはありません。

多くの場合はレポートの提出忘れや遅延、欠席、授業態度の悪さ、などが目立って減点対象となる場合が多く、何かしら問題を抱えている学生がボーダーラインに立つことになるのです。

ここで、単位不認定とする教員もいます。
むしろ、そのような教員が多いかと思います。

しかし、単位不認定とすると次年度も同じ授業を受けてくるということになります。

つまり、次年度、また問題のある学生を相手にしなければならないわけです。

そこで、「面倒だな」という理由から単位を出す教員が現れるわけです。

この事例はなぜ気づいたのかというと、明らかに単位を落としまくっている学生が、ある教員が担当の科目だけ単位を取得していたからです。

気になってその教員に、担当する科目におけるその学生の様子を聞いてみたところ、やはり、他の科目と同様の様子で、態度が良いとは言えない状況でした。

ではなぜ単位が認定されたのか、ということを聞いてみると「面倒だから」という回答が返ってきたわけです。

この教員の評価方法に問題がある、というのが一番なのですが、確かに、単位不認定を突きつけるということは、次年度もその学生と向き合う必要が出てきます。

そのため、不認定を出すということは、ある意味で優しさでもあり、きちんと基準に見合う知識・技能、対人スキルなどを身に着けさせるという指導でもあると感じた次第です。

通知表

今回は単位の認定についてお話ししました。

保身にはなりますが、私は極力評価で悩みたくないため、システマチックに評価を行っております。

また、小テストを行う科目では毎回学生にも採点結果を返却していますので、単位認定までにあと何点足りないのか、ということを学生もわかるようにしております。

単位認定は大学業務の中でもハラスメントなどとつながりやすい業務の一つですので、細心の注意を払って行っています。

評価が増える年度末がやってきますので、大学だけでなく、学校関係者の方々はくれぐれもご注意ください。

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