大学教員の責任~情と規程とハラスメント~

大学教員の仕事

今日は大学教員の責任について考えてみたいと思います。

大学教員は人の人生を左右する

教員という職業に就いている限り、少なからず人の人生に何かしらの影響を与えているとは思うのですが、大学教員はとりわけその影響が大きいと感じます。

大学入試

まず、大学入試で受験生の人生を左右します。

大学は誰しもが進学するわけではないため、正確には「大学進学を望んでいる生徒」の人生を左右するといったほうが良いかもしれません。

高校入試も同様に大きな影響を及ぼすかと思いますが、普通科のない大学での専門的な学びは、その後の進路を決めてしまいかねないため、より大きな影響を与えると思っています。

もちろん、浪人などの方法を取ることもできますが、時間というものは戻ってきませんので、1年という貴重な時間を消費することを考えると、やはり、人生を左右していると考えてもおかしくはないのかなと感じます。

そのため、生徒の入学を選抜する大学教員は、まず、入試において人の人生に大きく影響を及ぼしています。

卒業認定

そして、もう一つの人生を左右する出来事としては、卒業認定が挙げられます。

卒業認定は学生の積み重ねてきた単位の状況で決まるのですが、最後の1単位が取得できなかったがために、留年が決まるというケースもあります。

これは珍しいことではなく、毎年必ずと言っていいほど、数単位足りないがために留年決定という学生がいます。

留年するということは、大学を卒業したという証明ができないため、就職が内定していた学生については内定が取り消しになるケースもあります。

中には翌年の卒業まで雇用形態を変更して雇ってくれる懐が深いのか、人手が相当足りないのか分からない会社もありますが、基本的には留年が決定した時点で内定取り消しです。

就職は人生の岐路とも言える社会人としてのスタート地点となりますので、その後の人生に与える影響は非常に大きなものとなります。

そのため、4年生の授業を担当している教員を中心に、卒業認定をする(卒業に必要な単位を与える)という点において、学生の人生を大きく左右しているといえます。

上記のように、大きく入学時点と卒業時点で人の人生に大きな影響を与える大学教員ですが、特に、卒業に関わる単位認定については、非常に悩むこともあります。

授業に全く来ていない、テストの点数が明らかに足りていない、などの事情であれば、こちらも何の問題もなく採点ができるのですが、たまたま病気が続いた、それまでは真面目に受講していたがテストだけは失敗した、などといった場合、私の場合は情が湧いてしまうこともあります。

「なぜ、この時休んだ」
「なぜ計画的に勉強しなかった」

このような想いが渦巻きながら、最終評価をすることがあります。

そして、それが卒業認定に関わる科目であった場合、悩みに悩みながら評価をすることとなります。

規程

ただ、どれだけ悩もうと、どれだけ助けようとしても、自分の感情で規程を変えることはできませんので、心を「無」にして評価を行わなければなりません。

いっその事、授業を不真面目に受け、初めから単位取得を諦めているようような態度を取ってくれたほうが、単位不可にするのは楽なのかもしれません。

実習などの特殊な事情があり、課題を与える、もしくは補講を行うなどの措置がとれれば良いのですが、そういった措置さえも取れない学生もいます。

そのような場合は、内定取り消すになることや、留年になることを把握したうえで単位不可の評価を下さなければなりません。

ハラスメント

そして、いざ単位不可として成績を事務方に提出し、学生に開示すると、4年生では特に「異議申し立て」が来ることがあります。

基本的に大学では成績開示から一定期間の間で「異議申し立て」を行うことができます。

この異議申し立てを受けた場合、教員は学生に対して、どうしてそのような評価となったのか、ということを説明しなければなりません。

一昔前までは、この異議申し立ても形だけのものであったと聞いたことがありますが、今の時代、学生はしっかりと異議申し立てをしてきます。

明らかに出席が足りていない学生であっても、悪あがきなのかわかりませんが、異議申し立てを行ってくることがあります。

そして、異議申し立てをしてくる学生の中には、「これはアカハラだ」「訴訟を起こす」などと言ってくる学生もいます。

幸い、私はまだハラスメントだなんやらだ、と言われたことはありませんが、評価が不透明であると、異議申し立てが多くなってきます。

そのため、最近ではシラバスに記載する「評価の方法」という部分もかなり厳格に定めるよう、大学からチェックされるようになってきています。

当たり前のことではあるのですが、シラバスなどは学生もほとんどみていませんので(うちの大学では)、テキトーに作られることが多かったのです。

話がずれましたが、単位不可をだすことによって、学生の人生を左右するだけではなく、悪者扱いされることもあるのです。

ライフプラン

話がまとまりませんが、今回は大学教員の責任についてお話ししました。

冒頭でもお話ししましたが、教員という職業に就いている限り、誰かしらに影響は与えます。

しかし、誰かの人生を左右しているという認識を持っている教員は少ないのではないかと思います。

情に流されてはいけませんが、救えるのであれば、救える段階で手を差し伸べてあげたいものです。

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