今回は小学校教員が大学教員を目指す際に有利となる経験についてお話していこうと思います。
実務家教員としての有利な経験
これまでも小学校教員から大学教員を目指す方法などを書いていきましたが、今回はより具体的な経験についてお話していきます。
過去の記事をご覧になっていない方は、ご参考まで。
これから紹介する業務は大学教員を目指すうえで有利になることは間違いないのですが、正直、通常業務と並行して行うのが大変なものもあります。
ただ、苦労した分、間違いなく実績として蓄積されますので、大学教員を目指されている方は、ぜひ、取り組むことを検討してみてください。
①教育実習生の受け入れ
小学校に限らず、教員を続けていると教育実習生を受け入れる機会が訪れます。
学校や年にもよるのですが、どのような学校でも(僻地などを除く)数年に一度は実習生受け入れの依頼があります。
大学の付属校などで勤務されている場合、毎年ほぼ確実に教育実習生を受け入れることとなるため、実習生の受け入れも通常業務としてみなされているかもしれません。
実習生の受け入れは、大学の付属校などでない限り、基本的にはある程度の年数を経たのちに任される場合が多いと思うのですが、学校の規模によっては、若手にもその機会が回ってくることがあります。
正直なところ、実習生の受け入れというのは大変です。
通常の業務に加え、毎日の日誌の添削、実習生のスケジュール管理、研究授業への参加、助言など、2週間から1か月程度、激務が続くこととなります。
実習生が来てくれることによって負担が軽減されることもありますが、日誌の指導や指導案の添削などは通常業務に追加となるわけですので、業務量が増えることがほとんどです。
ただ、この実習生の受け入れというのは、大学教員公募においては有利なポイントとして働きます。
多くの大学が公募の際に使用する、文科省の教育研究業績書(様式第4号)というものがあります。
これは様式に違いはあれど、どのような公募においても必須となる書類ですので、提出がない大学というのは基本的にありません。
その項目の一つに「実務の経験を有する者についての特記事項」といものがあります。
この項目に関しては、人によっては空欄となってしまう方も多いのですが、実習生の受け入れはこの欄に記載することができます。
正直、大変ではあるのですが、確実に他の方と差をつけるポイントの一つとはなりますので、もし実習生の受け入れを打診された際には、ぜひ引き受けてもらいたいです。
②公開研究会への参加
学校によっては毎年「公開研究会」というものを実施している学校があります。
私の勤務していた学校も毎年、公開研究会を開いていたのですが、大学教員公募に応募する際、この経験は有利なポイントの一つとして働きました。
公開研究会については各自お調べいただけたら幸いなのですが、簡単に言えば、その学校が行っている研究、教育について外部に発表する機会と思ってい頂けたらと思います。
学校という場所は、基本的に教育方針を定めており、その教育方針に合わせて力を入れる分野、教科というものが出てきます。
その教科の授業における学校独自の取り組みや新しい授業方法などを検討し、外部に発表する機会が公開研究会というわけです。
授業を参観してもらった後には、参加者との意見交換会もあり、公開研究会当日は1日研究会で潰れます。
もし、公開研究会を行っている学校に赴任した場合、大学教員を目指している方にとっては「ラッキー」といえるかもしれません。
公開研究会は規模に関係なく、先ほど紹介した教育実習生の受け入れと同様、教育研究業績書の「実務の経験を有する者についての特記事項」に記載することができます。
そのため、毎年公開研究会を行っている学校であれば、他の学校とは違い大変忙しくなるものの、毎年、知らず知らずのうちに大学教員こぶにおける加点ポイントが溜まっていっているということになるのです。
また、公開研究会で行った実践というのは外部に向けたものになりますので、通常の授業より洗練されたものになります。
そのため、その実践を学会などの「実践研究」として報告することもできます。
もちろん、論文を書く時間が必要となりますが、自動的に実践研究のネタが蓄積されていきますので、公開授業を論文として残しておけば、さらに大学教員公募において有利となります。
研究校に配属された皆さんは本当に激務の中働いていらっしゃるかと思いますが、大学教員公募という視点から見ると、その経験は決して無駄にはなりません。
③研究会における代表授業者
自治体によっては、「教育研究日」というものが設けられている自治体があります。
これは、月に1回、決められた日にちを午前授業として、午後は自治体内の教員が集まって研究を行うというものです。
これは採用試験を受けた自治体によるため、すべての自治体で行われているわけではありませんが、実施されている自治体で採用された場合、「義務」となり、必ず参加することとなります。
私が勤務していた自治体では、毎年、興味のある教科の希望が聞かれ、その教科に興味のある方で研究グループを組み、1年間をかけて授業研究を行っていきます。
自治体内の先生が集まりますので、教科によっては100名を超える教科もあります。
そして、各教科の研究グループでは、十中八九、研究授業が行われ、その授業に関して検討をしていくという流れになります。
その際、研究授業を行う人が「代表授業者」となるわけです。
この代表授業者は1名だけでなく、各学年ごとに設定されたり、教科内の分野(例:理科であれば、化学、生物、物理など)ごとに代表者を決めたりすることがありますので、人数に関しては研究グループによります。
この代表研究者は、正直、誰もやりたがらないため、立候補すれば競合することなく決まることがほとんどです(私の自治体ではそうでした)。
そのため、教育研究日が設けられている自治体でお勤めの方は、この機会を利用して実績を積むことをお勧めします。
この実績も上記の公開研究会における授業経験と同様、教育研究業績書の「実務の経験を有する者についての特記事項」に記載することができます。
また、研究授業を行いますので、公開研究会と同様に、論文に書くためのネタにもなります。
自治体内の教員から袋叩きにされる可能性はあるため、非常に気が引けるのですが、大学教員公募に関係なく、いち教員としての実力が上がることは間違いないため、大変ながらも飛び込んでほしいと思います。
※学内研修会の講師
教育研究業績書の「実務の経験を有する者についての特記事項」については、「学内研修における講師」というのが記載できる可能性もあります。
ただ、正直なところ、外部に向けて行った実績ではないため、上記の公開研究会や代表研究者に比べると弱くなってしまいます。
公務文章で何かしらの主任となっている場合、学内研修を行うこともあるのですが、それはあまりポイントにならないと考えたほうがよいでしょう。
もちろん、記載するのは自由ですので、書けるだけ書くということは大事なのですが、印象としては薄くなってしまうという個人的な感想です。
今回は小学校教員が大学教員を目指すうえで有利となる業務についてお話ししました。
自治体や学校によっては上記のような機会がないかもしれませんが、基本的には外部向けの授業などは教育研究業績書に記載することができます。
ただ、どれも大変であり、上記の例が重なっていた場合は想像を絶する忙しさが予想されます。
私は公開研究会と自治体の代表研究者に選ばれたのが同年であったため、その年の記憶はあまりありません。
ただ、その経験が今の職にもつながっていると考えると、やはり無駄ではなかったなと思えます。
大変な時はそのありがたみが全く分かりませんが、振り返ると自分にとってかけがえのない糧となっているのかもしれません。
小学校以外の校種の先生方にも当てはまるかもしれませんので、よかったらご参考にしてください。
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