今回は指定校推薦についてお話ししたいと思います。
指定校推薦とは
まず、指定校推薦とは何かということですが、その名の通り、大学が指定した高校にのみ与えられる推薦枠であり、私立大学にのみ存在する制度です。
大学が指定する高校に対して「何名の推薦を受け入れます」という話を持っていき、その大学を志望する生徒がいたら、学内での検討の後、高校として推薦をするという形です。
分かりにくい説明で申し訳ありませんが、詳しく指定校推薦について知りたい方は、ネットでお調べいただけたらと思います。
簡単にまとめると、学生確保のための制度の一つということです。
指定校推薦のメリット
指定校推薦は大学にも高校にもメリットがあります。
まず、大学側のメリットとしては「確実な入学生の確保」ができるということです。
基本的に指定校推薦をされた生徒はその大学に入学することを前提に推薦されていますので、合格が決定すればよほどのことがない限り辞退することはありません。
私立大学というのは併願で受ける学生も多く、本命の大学に受かった学生は辞退することも珍しいことではないため、確実に入学してくれる生徒というのは入学定員を確保するうえで非常に重要な存在となります。
そして、高校側のメリットしては、「進学実績」になるということです。
高校のレベルにもよりますが、国立だろうが私立だろうが、一般だろうが指定校推薦だろうが、「大学に合格」という事実に変わりはないわけです。
進学実績を積み上げるためにも、大学への入学者がほぼ確定されている指定校推薦は、高校にとっても悪い話ではないといえます。
ちなみに、指定校推薦による受験者はあくまで「推薦」されるだけであり、「合格」が確約されたわけではありません。
ただ、大学側から「指定校枠」の打診をしている手前、高校内での推薦が決まれば、よほどのことがない限り落ちることはありません(注:大学によります)。
もちろん、試験に100%はありませんので、面接時の態度があまりにひどい場合などは落ちることもあるかと思いますが、「普通」に受験すればまず落ちることはないでしょう(注:大学によります)。
大手私大の指定校推薦では落ちたという話も聞きますので、指定校推薦の取り扱いは大学に寄りますが、基本的には落ちることのほうが珍しいのが指定校推薦といえます。
合格と入学がほぼ確約されている指定校推薦は、大学と高校にメリットをもたらしてくれるのです。
指定校推薦の呪縛
ただ、いい面ばかりではありません。
ここからは大学教員としての見方、意見となりますが、指定校推薦による呪縛も存在します。
上記のメリットの中でも触れましたが、指定校推薦というのは合格と入学がほぼ確約されています。
そのため、高校内での推薦が決まれば、よほどのことがない限り、入学「させなければならない」一面をもっています。
つまり、高校内での推薦が決まり、受験の際の面接も「普通」にこなすことができれば、どんなに学力が低くとも、トラブルメーカーであったとしても「合格」がでてしまうのです。
学力試験を課している大学もあるのかもしれませんが、15分くらいの簡単な面接で終わり、というのが大半だと思います。
そのような試験で入学してくる学生というのは、一般試験のような学力試験を経て入学したわけでも、総合型選抜などにおけるアピールポイントをもって入学したわけでもないため、何かしらの問題を抱えていたとしても入学ができてしまいます。
そのため、入学後の指導が大変、というのが正直な本音です。
もちろん、指定校推薦で入学した学生全てが大変というわけではなく、優秀な学生がいることも間違いないのですが、割合としては圧倒的にして公推薦で入学した学生の指導のほうが大変です。
しかし、学生の払ってくれる学費や入学金などで生活をしている我々としては、確実に入学してくれる学生というのは切り離せない部分があるのです。
規模の小さな小規模私大であれば尚更その傾向が強くなり、入学後の指導も大変さを増します。
指導が大変だから一般入試できちんと学力の高い学生をとりたい反面、入学定員を満たさなければ元も子もないから、指定校推薦に頼らざるを得ない、というジレンマが発生するわけです。
末端の下っ端教員としては、一般入試枠をもっと広くしてほしいと思うのですが、経営するお上の立場で考えると、そう簡単な問題でもないようです。
今回は指定校推薦についてお話ししました。
国立大学や大手私大、偏差値の高い大学では無縁の話かもしれませんが、国内のほとんどの私大が指定校推薦に頼っているというのは事実です。
少子化問題で入学者がただでさえ減ることを考えると、今後も入学後の指導に頭を悩まされるのかもしれません。
コメント